Adidas Stockholm Marathon 2023(2023,6,3)  ー 旅ラン2023(5)

レース前

コース確認

 スタートが正午ということで、AM8時頃起床すれば充分だろうと考えていましたが、実際には6時頃には目が覚めてしまいました。特にすることもなかったので、レースのコースの確認などをしていました。初めて訪れた街なので、はっきり言ってよくわかりません。

 5㎞から10㎞あたりは、地図上で私が宿泊しているホテルがある地区なので、なんとなく想像ができました。ストックホルム中央駅のあたりもなんとなく想像できました。

 私は、ポイントとなるのは、30㎞付近にある橋だと考えました。20㎞くらいまでは、いつもフォームも崩れず元気だし、「よし、ここからだ!」とその後の10㎞も気力で何とか保っています。しかし、30㎞過ぎからが心身ともにきつくなってきます。今回は30㎞のこの『橋』を目指し、ここでもう一度『喝』を入れて最後まで頑張ろうと考えました。

朝食

 7時くらいに朝食を摂りにホテル内のレストランへ行きました。「もしやマラソンに参加されるのでは?」という服装の方が数名(男性)いました。

 水分の摂りすぎは、お手洗いに行きたくなってしまうので、早朝スタートの大会ではヨーグルトのみということもあるのですが、ストックホルムは時間的に余裕があるので、割と食べたいと思うものをしっかり食べました。

 部屋に戻った後は、アップルミュージックを聴きながら体をほぐしたりして過ごしました。「ああ、とうとうこの日がきたんだなあ。」という程よい緊張感に包まれていました。

会場へ

 午前10時ごろホテルを出発。T-centraren駅にはマラソンに参加するであろう人たちがたくさんいました。もう、電車が満員で。押しつぶされそうになりながらなんとかStadion駅に到着。皆について行きます。

 スタートまで1時間以上ある。荷物を預け、お手洗いを済ませる。ストレッチをしたり、仲間と談笑したり、皆それぞれ、思い思いに過ごしていました。

会場のトイレ事情

 私は、まだそれほどたくさんの大会に参加してきたわけではないのですが、その数回の経験のなかでいうと、トイレ事情は、ストックホルムマラソンが一番手厚かったといえます。

 多くの大会は、メイン会場内にはトイレを多く設置してくれています。しかし、スタート地点近くにまで設置してくれていたのはストックホルムマラソンが初めてでした。全てのランナーがスタート地点でスタンバイしてから実際にスタートするまで40分くらいあります。その間にお手洗いに行きたくなることがあるのです。いくら入念にその前に済ませておいても、緊張などから行きたくなったりします。しかし、スタート地点近くにトイレがない場合は、我慢するしかありません。

 ストックホルムマラソンの場合は、目標タイムのブロックごとにトイレが設置されていたので、直前まで行くことができました。実際、私はスタート10分前に行きました。

 こんな些細なことからでも なんとなく、その国の根底にある考え方がわかる気がしました。

多種多様な参加者たち

 たいていのマラソン大会は、お金を払ってエントリーすれば基本誰でも参加することができますから、色々な参加者がいらっしゃいます。人種も国籍も様々です。でもやはり開催される国の方が一番多いとは思います。今回でしたら、スウェーデンの方がほとんどでしょう。アジア系の方は少なかったです。エリートランナーのことはわからないのですが、一般ランナーについては、アフリカ系の方もほとんど見かけませんでした。とはいえ色々な方が参加していました。

 こんな方達がいらっしゃいました。

ご夫婦での参加?

 外見から判断すると、ヨーロッパ系の人種の方でした。国籍まではわかりません。年齢は、男性が60代後半くらい。女性が60代前半くらいでしょうか。ずっと手を繋いでいます。お二人の左手の薬指には金色の指輪が光っています。ご夫婦でしょうか。時折、言葉を交わしています。スタートの時間が近づいてきます。みんなソワソワしてきます。私も、大きく息を吸って、心の中で『よし!』と喝を入れます。その時です。その二人は、暑いキスをして一言言葉を交わしました。日本人の私としては、人前でそのようなことをするのは、恥ずかしさがあり、思わず目を伏せてしまいました。想像するに、「大丈夫!頑張ろう!」と健闘を誓っていたのではないでしょうか。

 あまりにもたくさんの方が走りますし、走りだしたら自分のことで精一杯になってしまいますから、そのお二人のことも見失ってしまいました。きっとお二人で手を取り合って仲良くゴールされたことでしょう!

ハンディキャップのある方

 また走っているときに2人程見かけたのですが、どちらかの脚が悪くてびっこを引いている方がいました。両脚が正常でも42kmを走ることは大変なことです。どういった思いがあって参加しておられるのかは本人しかわからないことです。是非無事にゴールできることを願いながら、私も自分の走りに集中しました。

 また、『BLIND』というゼッケンをつけた方と伴走者の二人組にも出会いました。伴走者の方は、常に何かを話していました。多分、道の状況や給水所ポイントについてなど色々な情報をランナーに伝えていたのでしょう。ランナーの方も初夏のストックホルムの風を一身に受けながら、他のランナー達の息遣いを感じたり、沿道からの声援も聴きながら走っていたのでしょう。

特注のTシャツ?

 背面に『走らなければ出会えない感動がある!』という文言がプリントされたTシャツを着た若い男女の二人組が走っていました。日本人の方かしら?恋人どうしかしら?部活の先輩後輩かしら?それともご夫婦?色々想像しながら、そしてその文言に勇気づけられながら走っていました。無言のエールに感謝しながら走りました。そのお二人は、私を颯爽と抜き去っていきました!きっと好タイムでゴールされたことでしょう。

レース中

レース前半

 まずは、自分のペースを確認しながら慎重に走りだします。ペースメーカーの方が目印の風船を掲げて走ってくださっているので、自分の目標タイムの方の付近を走ります。私は5時間以内を目標にしていたので、4時間30分の方の付近を走っていました。

 日常のトレーニングでは20㎞くらいは走っているので、気持ち的にも前半は余裕があり、フォームも崩れることなくいい調子です。コースの地図を頭に思い浮かべながら、「今、この辺りかな。」と考えたりしながら走ります。街の景色を楽しむ余裕もあります。

 私は、余程気温や湿度が高い場合以外は、20㎞付近までは水分補給をしません。走りながら考えます。走る土地の状況で判断します。今回は、18㎞あたりで初めての給水を摂りました。本当はハーフまでは給水無しで頑張りたかったのですが、意外と汗もかいていましたし、口の中の状況などから判断しました。脱水症状になってリタイアなんてことになったら元も子もないですから。

 コース自体は直線の部分が多く先を見通せるので、ペースメーカーの方がどこを走っているのかとか、どのくらい距離が離れているのかなどがわかりやすく、自分で調整しやすかったです。

 21㎞地点を無事通過します。いつもこのとき、「本番はここからだぞ!」と一層気を引き締めていきます。

レース後後半

 25kmくらいから、疲れも出てくるし、走ることに飽きてくるというか、結構しんどくなってきます。後半の21kmは前半の21kmとは全く違うものです。

 体の疲れとともにモチベーションも下がってくるというか。そこで私は用意していたイヤホンとスマートフォンをウエストポーチから取り出し、Apple Musicにつないで曲を聴きながら走ることにしました。楽曲のリズムに合わせて手足を動かします。音楽に助けてもらいながら走ります🎶。自分の好きな楽曲の場合は結構リピートして何回も聴きました。だんだん気力も戻ってきて体の動きも軽くなってきました。音楽を一旦切ります。

 音楽を聴きながら走ったのは今回が初めてです。それまでのマラソンの後半はどうしていたのでしょう🎧。何を考えながら走っていたのでしょう。思い出せません。ただ景色を観ながらとか?

 28㎞、29㎞と進むにつれ目標としていたあの『橋』に近づいてきます。まだ?橋まだ?いったいどこ?みたいな感じで。とうとう橋まで来ました。この橋を渡り切ればちょうど30kmなので、そこが最後のポイントであると考えていたのです。

 橋の中央部分から見えるストックホルム市街中心部は絶景でした。両手を広げてその景色を抱きしめるような気持ちで走りました。もう二度と来ることは無いかもしれないのだから目に焼き付けておこうと、ずっと両手を広げて右側を向いて走りました。一瞬「何だ!この変なおばさんは!」と思われるかなと思いましたが、30km付近ともなれば皆必死です。人のことなんか気にしている余裕もなくなっています。誰一人私のことを見ている人はいませんでした。少なくとも私より先を走っている人は。私より後ろを走っている人にはおのずと目に入ったかもしれませんが。私の体格や外見を見れば、アジア人であることは容易に想像でき、「外国から来て、ストックホルムを楽しんでいるのかな。」と感じてくれたのではと勝手に思っています🤭。

 実はここからの10kmが最も辛かったのです。自分の時計ではありましたが、5時間をきることができる状況にはありました。なんとかペースを保って頑張りたかったのですが、スタミナ切れだったのか、体の動きも悪くなっていきました。ずるずるとペースが落ちていきました。給水の回数も増えましたし。エネルギー補給のものを自分で用意することを怠っていたのも残念でした。

 大会によって給水ポイントで配給されるものが異なります。シドニーでは、ブラックモアーズというサプリメントの会社がスポンサーだったため、スポーツ用のエネルギーチャージの食品が給水ポイントでも配給されていました。それをいくつかポケットに入れて走りました。

 しかし、今回は所々でバナナ🍌をふるまってくれていましたが、基本的には水かスポーツドリンクのみでした。

 心も折れそうになりながら、最後の数キロは、Appleのお気に入りの自分のアルバムの中のAAAの”Yell”をリピートにしてエンドレスで聴きながら、歌詞を噛みしめながら走りました。人を元気づけてくれるものの中には、絶対音楽も必要だとこのとき身に沁みました。何回聴いたかわからないくらいのところで、ゴール地点であるオリンピックスタジアムが見えてきました。

https://www.apple.com/jp/apple-music/

 シドニーのときは、対岸の入江からゴール地点であるオペラハウスが見えたときは、もうそれは嬉しくて嬉しくて!急に元気が湧いてきて、最後の1kmはずっと笑顔で走っていました。でもストックホルムでは、嬉しさというよりは、ほっとした感じでした。やっとここまで来たというような。

 あともう少し!

タイム

 なんとかゴールに辿り着きました。タイムは、5時間10分30秒でした。シドニーでは5時間13分19秒でしたので、ほんの少し上回りましたが、5時間以内でゴールすることを目標にしていたので残念でした。なかなか難しいですね。

 シドニーでは、37㎞付近で派手に転倒してしまいました。今回はそうならないように意識して気を引き締めていたので、そこはクリアできましたが。

メダルのリボンの色が、スウェーデンの国旗の色であるブルーとイエローであるところが、愛国心を表しているようで素敵だなと思いました。

 この大会のスローガンは、完走メダルの裏側に刻まれている ”IMPOSSIBLE  IS NOTHING” です。”不可能なことなど何も無い!”といったところでしょうか。

 いや~。不可能なこと、たくさんあるなあ。なんなら、不可能なことだらけかも。と思ってしまう。でも、最初から諦めて何も行動を起こさないのであれば、小さな変化さえも起こらず、結局何も成し遂げることはできない。とりあえず、トライしてみよう!ということなのでしょうか。また、途中で挫折しそうになっても、立ち止まらず、少しずつでも前進していこうということなのでしょうか。

 私は、『ぐっと背中を押してくれる』このスローガン、結構好きだな。大会に参加できたことは本当に良かった。

レース後

 もう少し余韻に浸っていたいという気持ちもありましたが、足の状態も結構限界にきていましたし、とりあえずホテルに戻ってシャワーを浴びてスッキリしたいという思いもありました。それに、お酒を飲みながらディナーを楽しみたいという気持ちもありました。名残惜しかったですが、会場を後にしました。

 もう既にStadion駅は大変なことになっていました。帰路に向かう大勢の人達で駅構内へ入ることも困難な状況でした😥。改札を通って無事に電車に乗ることができるまで30分以上はかかりました。

 ホテルに戻った後再び出かける元気はありませんでした。食欲よりも疲れの方が大きかったようです。シャワーを浴びてスッキリしたあとは、もうただゆっくり眠りたいという感じでした。

 翌日は飛行機でゴットランド島に行くことになっています。少し早め(午後8時半くらい)でしたが、一日のことを振り返りながら、満たされた気持ちで眠りにつきました。